ホタルに及ぼす人工照明の影響(光害)とその対策:資料

前号で調べた「ホタル百科事典/ホタルに関する調査研究レポート』の中から対策に抜粋したものを続きで紹介します。

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人口照明とホタルについて

 

  蛍光灯、白熱電球なども、月明かり同様にホタルが感受する波長を含んでおり、直射光はもちろん反射光でもホタルの発光活動を抑制してしまう。月明かりは0.2 luxしかないが、街灯などは何百luxもあり、夜間でも四六時中、しかもホタルから比較的至近距離で広範囲を照らしている。また、夜行性であるホタルは、明るければ複眼の色素細胞によってレンズが絞られるが、人工照明によって夜になっても明るければ、その明るさによってはいつまでもレンズは絞られたままかもしれない。更には、ホタルの体内時計は光によって抑制されることが判っている。

 一日中明るければ機能しなくなってしまう。つまり、発光はおろか、水をなめる行動以外は出来なくなってしまうのである。また、蛹になるために上陸する幼虫にも影響を及ぼし、0.1lxの人工照明でも上陸を阻害してしまう。もし、人口照明が生息地にあれば、致命的と言わざるを得ない。人工照明は「光害-ひかりがい」といわれ、ホタルの生息に大きな影響を与えてしまう。

 

1. 成虫の飛翔及び発光活動の抑制→配偶行動及び産卵行動の阻害

2. 幼虫の上陸行動の阻害

3. 成虫の光コミュニケーションの撹乱・妨害

 

 光害は、夜間に四六時中明かりを照らす街灯だけではない。鑑賞者が持ち込んでホタルに向けて照らす懐中電灯や車のハザードランプもホタルに悪影響を及ぼす。これらの行為は誘蛾灯に等しい。

 誘蛾灯とは、照明を使って昆虫を集め,捕獲して殺してしまう器材である。青色蛍光灯の前面に高圧電流を流した金属格子をめぐらせ,飛来した昆虫を放電して殺す「電撃殺虫機」や、青色蛍光灯の近くに粘着物質を塗布したシートやテープを設置して集まった昆虫をからめ取る「粘着式ライトトラップ」などいろいろなタイプのものが市販されている。ホタルを殺すことが目的ではないにしても、光コミュニケーションの撹乱・妨害には十分役立っている。 

右上の写真は、ホタルの生息地を自動車のライトが四六時中照らしている様子である。人々の手には、懐中電灯が握られ、時折カメラのフラッシュが瞬く。人々はホタル鑑賞のために訪れるが、これらの行為による「光害」によってホタルが絶滅した場所は、全国的にたいへん多い。

 また一部では、懐中電灯に赤いセロハンをまけば影響がないという情報もあるが、先に述べたようにホタルは赤い色も感受しており、実際に実験したところ反応しているので、光害となる。ただし、路面上の照度が20lx以下の赤色照明では影響が少ないという実験データがある。(文献1.)